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町でうわさの本読みブログ

誰にも気づかれないうちにタイトル変更。現在は読書感想と、日常の面白いことについてつづります。

「完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込」  若林正恭

今さら説明するのもまぬけですが、

お笑いコンビ「オードリー」の若林正恭さんのエッセイです。

 

文庫版では単行本未収録だった部分も追加されているそうな。

私は始めから文庫で読んだのですけども。

 

さて、その内容はというと、とにかく自意識過剰。中二病全開。

なんだかラスコーリニコフ罪と罰の主人公ですね)みたいだなあ、と

始めはちょっと意地悪く、にやにやしながら読んでいました。

 

しかし読み進めていくうちに、

「これ、私のことじゃん!」と気づきました。

 

例えばスタバで「グランデ」と言えない。

誰も自分のことなんかみてない、それはわかっている。

でも、自分が見ているのだ!  などなど。

 

ああ~、わかるよ。わかりますよ。

なんだよお~、自意識過剰は私のことかい。ははは、こりゃまいったね。

 

と、なんだか意外な結論(私にとっては)になりましたが、

若林さんはさすがプロの表現者です。

読者が「ああ、わかる」というだけでは終わらないものがあります。

思わず「ううむ」とうなる名言も。

 

「ネガティブを潰すのはポジティブではない。没頭だ」

「状況がダメなのではなくて、状況をダメだと捉えてしまうことがダメなのだ」

などなど。

 

中でも一番心が動かされたのは、単行本化されたとき、

ある読者からの感想の手紙についてのこと。

 

「暗闇に全力で投げた本が君に当たった音が、ぼくの耳にちゃんと聞こえたんだ」

 

おそらく、雑誌に書いていたときは誰が読んでくれているのか、

もしかして誰も読んでいないのか、きっと不安だったのでしょうね。

自分のメッセージというか表現が、暗闇に吸い込まれているだけかも、

と思った時期もあったのかもしません。

 

でも、ちゃんと相手に届いていたのですね。

君は一人じゃない、なんて言葉は安っぽいけれど

(あ、こういう言い方が自意識過剰なんだな)

でも、とても大事で勇気づけられることなんだ、と改めて思いました。

 

私のこのブログは今のところ、暗闇に吸い込まれているだけかもしれませんが。

 

本の帯には「就活生に薦めたい」とありましたが、

むしろ、大人にオススメかも。

まだまだ自分は自意識過剰だし、それはそれでもいいのかも、

と思わせてくれる本です。

 

 

 

 

学校では教えてくれない国語辞典の遊び方 サンキュータツオ

恥ずかしながら、国語辞典は20年ほど前に買ったもの1冊しか持っていません。

きゃ~、ほんとに恥ずかしい。

 

いや、あの、わかってるんですよ。買い替えたほうがいいということは。

今は、辞書ごとに内容に個性があるというのもよく知られた話ですし。

 

でも、その個性というのがちょっと手ごわい。

具体的にどこがどう違うのか、なかなか素人にはわからない。

そんなことをぐだぐだ考えて、結局買い替えずにいるのです。

 

そんな基本的すぎる悩みに答えてくれるのが、この1冊!

 

代表的な辞書の違いを丁寧に解説してくれます。

各辞書をわざわざキャラ分けまでして…。

 

例えば岩波国語辞典は「都会派インテリメガネ君」

有名な新明解国語辞典は「マイノリティの味方」というふうに。

 

どの辞典が自分に合うかは、巻頭の「オススメ辞書占い」で選べます。

(占いというか、YES、NOで選ぶアレです)

私は角川必携国語辞典くんがいいらしいです。

なんでも彼は「丁寧に教えてくれる、良家の子」だそうです。

あら、ますます私にぴったりね!

 

しかし、何よりすごいのは著者のサンキュータツオさんの

辞書への深すぎる愛でしょう。

 

いくつもの辞書を読み分けるだけではなく、

同じ辞書でも版が改まるごとに買い替え、古い版との違いを徹底比較。

 

これはもはや愛というよりは執着というか、業ですね。

そんなに読み比べて何になるのか、なんていう問いはどうでもいい。

とにかく辞書を愛しすぎている人なのでしょう。

 

前回書いた「謎とき『罪と罰』」でもそうなのですが、

私は何かをものすごく愛しすぎている人に惹かれるのかもしれません。

 

そこまで何かに夢中になれることにうらやましいと思いつつ、

いや、ちょっとすごすぎますわーなどとも思ったりして。

凡人の心は少々乱れるのでありました。

 

ま、とりあえずこの熱い本に従って、新しい国語辞典を買おうかな。

 

 

謎とき「罪と罰」 江川卓

罪と罰」の解説本ともいうべき本です。

帯には「ドストエフスキーを本当に愉しむために最初に手にすべき1冊がここに!」と。

 

しかし、本書は軽い気持ちで手にすると、やけどする1冊。

中身は「罪と罰」への愛があふれて燃え上がり、ぐらぐらと煮えたぎっています。

 

著者はこの物語世界をできる限り実感しようとします。

それは大変誠実な態度だと思うのですが、なんだかすごいことになっていくのです。

 

例えば、主人公の下宿先から、彼がのちに殺すことになる

金貸しばあさんの家まで730歩とあるので、実際にその距離を

歩いてみたりしたというのです。

 

そしてまたあるときは登場人物たちのセリフをしぐさまじりに

朗読してみたり…。もちろん、そのときにはストップウオッチを片手に。

 

何しろこの小説、1日24時間のうち、48時間は誰かがしゃべってると

思うくらい、みんな饒舌。

 

しかし、江川先生の測定によると、会話時間、移動時間はきちんと24時間以内に

収まるそうです。

 

恐るべし、ドストエフスキー先生、江川先生!

 

そして、こういった細かい作業は、江川先生にとって

とても愉しい時間だったそうです。

そうでしょう、そうでしょうとも!

 

もうこうなったら愛というより、業ですね。

先生の魂の一番奥深いところにこの「罪と罰」という

作品が入り込んでいる。

 

そして読者も、煮えたぎる思いにときに戸惑いつつ、

最後はその業を共有することになるのです。

 

19世紀半ばにロシアで書かれた小説、

20世紀終わりにそれについて書かれた解説本、

それらを21世紀始めごろに読む。

まさに時空を超えた愉しい出会いでありました。

 

おまけ

たしか2週間ほど前に、1度この本の感想を書いたのですが、

全面的に書き直しました。

黙っていれば誰も気がつかないことですが、念のため。

 

謎とき『罪と罰』 (新潮選書)

謎とき『罪と罰』 (新潮選書)

 

 

 

 

 

 

地味すぎる悪意の恐ろしさ  「誘拐」 本田靖春

 この本は、1963年に東京の下町で起きた

男児誘拐殺人事件について書かれたノンフィクションです。

 

犯人は身代金奪取に成功し、男児は戻らぬまま  

2年経過し、未解決になるかと思われたが…。

 

「戦後最大の誘拐事件」とまで言われたそうです。

 

犯人の暗い生い立ち、警察の失態、被害者家族の絶望、と

印象に残る場面は多々ありましたが、

私が一番恐ろしいと思ったのは、被害者家族に対する嫌がらせの数々でした。

 

いたずら電話は日に2,3本。

子供の行方を知っていると書いてくる手紙など…。

 

もちろん、すべて匿名か偽名です。

こういうことをしている人たちはふだんはどう過ごしているのでしょう。

いつもいかにも暗い顔をして、不平不満たらたらなのでしょうか。

それとも、表面上は明るくていい人を装っているのでしょうか。

 

もし、卑怯な嫌がらせをしていることを周りの人たちが知ったら、

どうなるのでしょう。

「ああ、やっぱりね」なのか、

「あんないい人が信じられない」なのか。

 

周りに知られなければ、犯人のように社会的に罰を受けることなく

ふつうに生きていくのでしょうか。

 

なんというか、我ながらこの本の内容全体には触れず、

こんな細かいことを気にするってどうなんだ、と思わないでもないのですけれど。

 

しかし、そういう嫌がらせをする人たちも、

この空の下で人生を送っている、というのは確かなことです。

ああ、なんだかとりとめがない文章になってしまいました。

 

誘拐 (ちくま文庫)

誘拐 (ちくま文庫)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

齋藤孝の速読塾 齋藤孝 

サブタイトルは「これで頭がグングンよくなる!」です。

本屋さんでレジに出すとき、ちょっと恥ずかしいね。

頭悪いのバレバレだし。

 

ま、それはさておき(置くんかい!)

この本は巻末の水道橋博士による解説が一番面白い。

博士は、読んでもいないニーチェの言葉を引用し、

そもそもこの本自体、二割しか読んでいないという。

それでいいのか!?

いいのである。

 

なぜいいのかは、実際にこの本を二割読んでいただくしかあるまい。

いやまあ、とりあえずは二割以上は読んだほうがいいとは思いますが。

 

しかし、「二割読書法」はこの本が勧める読み方なのだ。

よ~するに、マグロの一番おいしいトロの部分だけ食べて、

あとは捨ててもよし! 次のマグロ(本)に取り掛かれ! ということなのです。

 

なるほどねえ、それは確かに合理的で、たくさん読める方法ですな。

 

ああ、だかしかし、貧乏性の私には捨てた八割が惜しい!

そこに何かいいものがありそうな気がしてしまうのです。

 

てなわけで、私はまずは八割読むという方法から始めようかと。

そしてそれに慣れたら五割読みにし、最終的に二割を目指す。

そうしていくうちに、本の要点を見つけていく力も

身ついていくかもしれません。

おお、我ながらナイスアイデ~ア!

 

ちなみに齋藤先生によると、

1000冊を超えたあたりから推測力の精度が上がってくるそうです。

う~~~む。先は長いぜ!

 

 

齋藤孝の速読塾 これで頭がグングンよくなる! (ちくま文庫)

齋藤孝の速読塾 これで頭がグングンよくなる! (ちくま文庫)

 

 

 

「坊っちゃん」 夏目漱石

あのー、これって失敗談ですよね。

坊っちゃんが就職に失敗した話ですよね。

 

東京から四国に教師として赴任したはいいが、生徒たちからは

からかわれ、先生たちのあいだではしょうもない派閥があり…。

 

最後は気が合った数学主任の山嵐(もちろんこれは坊っちゃんがつけたあだ名)

とともに、自分たちを罠にはめたせこい教頭赤シャツと、

太鼓持ちの野だいこをぼこぼこにする。

 

んで、せいせいした気持ちで退職!

って、いいんかい、それで!

 

結局、山嵐は辞めさせられたわけだし、赤シャツだって、何事もなかったように

教頭を続け、そしていずれはマドンナ(存在感のうすいうらなり先生の婚約者だったが、金のある赤シャツになびく女性)と結婚するのだろう。

 

赤シャツにしてみれば、気に入らない教師を二人も追い出せて、ラッキーじゃん。

ちょっとぼこぼこにされたくらい、安いもんさ!

 

坊っちゃん山嵐とそれから、忘れそうになるうらなり先生のその後の人生に幸あれ、

と祈るばかりだ。

 

それから、この話はいちおう教師ものというか、学園ものということに

なるのだろうけど、教師と生徒たちのふれあいというか、

感動的な展開は皆無。

 

坊っちゃん、生徒のためとか、教育論とか、布団にバッタ入れちゃうやんちゃな教え子がかわいいとか、そういうのまるでなし。

 

ま、坊っちゃん自身がタイトル通り、子どもだしな。

 

そんなわけだから、心残りも一切なく、あっさり退職。

新しい教育ドラマかもしれない。

 

あ、100年まえの作品でしたか。

 

坊っちゃん (角川文庫)

坊っちゃん (角川文庫)

 

 

 

 

「罪と罰」 ドストエフスキー

いやあ、読んだよ俺は! がんばったよ!

って、そんなに力むこたあないか。

 

つい最近、「『罪と罰』を読まない」という本を読み、

その本自体が面白かったので、こうなりゃ本家(?)も読むしかない、

と意気込んでおりました。

 

で、すっごく面白かったのですよ!

みなさんも一度は読むべきですな!

 

…あ~すみません、興奮して。

そりゃ面白いに決まってますがな。世界的名作だっつうの。

 

あ、第1部はたしかにちょっと読みにくかったです。

いきなり、なぞの酔っ払いの長ゼリフ。多少ほかの人物の相槌はあるけれど、

なんだかんだで20ページ(!)ほどしゃべってる。

 

この人はヒロイン、ソーニャの父親なのでとりあえずちゃんと読んでおいたほうがいいけれど。

 

ここを乗り越えればあとはぐんぐん読めます。

 

で、私は主人公のラスコーリニコフがなんか好きだなあ。

いや、付き合いたくはないけれど。

 

この青年はいちおうそれなりの理屈(屁理屈)をもって

人を殺したのですが、意外といい奴というか、小心者だったため、

その後はメンタルぼろぼろ。

 

急に気絶したり、病気で寝込んだり、たまに起きていて

機嫌がいいかと思えばすぐに部屋を出ていったり、と

まわりの人たちを無駄に心配させる。

 

そんでもって、2回くらいしか会ったことのないソーニャに

「いまのぼくに残されたのはきみ一人だけだ」とか言うし。

 

んもう、今どきの若い人はせっかちだこと。

 

「ぼくらは二人とも呪われた人間だ」とも。

勝手に一緒にすんな。

 

誰かこの若者に「それは恋よ」と言ってやってー!

 

とにかくまあ、こいつのプライドの高さが話をややこしく

しているのですが、なんだかそこがかわいいと思ってしまう私はシュミが悪いのか。

 

ラスコーリニコフシベリア送りになっても、

まだプライド高くて仲間のいない困り者なのですが、

静かにおとずれるラストシーンにはやっぱり感動してしまいましたよ。

なんか陳腐な言葉ですみません。

 

で、この本を読みながら、先にあげた「『罪と罰』を読まない」も読んでいました。

やっぱりいいガイドブックになりました。

内容の考察も読みやすく、面白くてわかりやすい。

こういう本がもっとたくさんあればいいのにね。

自分自身の読みの浅さもはっきりわかってしまうけれど、

それが考察を深めるきっかけになるかもしれないし。

 

罪と罰(上)(新潮文庫)

罪と罰(上)(新潮文庫)

 

 

 

罪と罰〈下〉 (新潮文庫)

罪と罰〈下〉 (新潮文庫)