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町でうわさの本読みブログ

誰にも気づかれないうちにタイトル変更。現在は読書感想と、日常の面白いことについてつづります。

「わたしが・棄てた・女」 遠藤周作

タイトル通りの内容です。

主人公に捨てられたヒロインの転落人生。

 

って、ここで終わってはアホですな。

そんな単純なメロドラマではないからこそ、

発表から50年以上も読まれ続けているわけで。

 

時は終戦後間もないころ。

大学生の吉岡は、身体目当てでミツという女性と知り合う。

そして、目的を果たしたあとは、文字通りミツを捨てる。

純粋なミツは、また会ってもらえるかと期待するが、

吉岡は就職先の女性と付き合い始める。

 

この吉岡という男がなかなかリアル。

こいつはミツを捨てるし、職場で見つけた恋人も、

純粋な愛情のみで付き合っているわけでもない。

将来の出世とか、世間体とかからしても条件のいい相手だったのだ。

 

しかし、それを「ひどい奴!」とも言えない気がする。

吉岡は

「現在における愛情にはエゴイズムをぬきにして考えるのは不可能だ」

と言っている。

う~ん、確かに。

こうやって言葉にするとえげつないが、実際、そうなのだなあ。

 

しかし、ミツは違っていた。

ミツはエゴイズムぬきに行動する人だったのだ。

 

このミツは、もうどうすんだ~!と突っ込みいれたく

なるような純粋というか、甘すぎる子なのである。

 

吉岡に体を許したのも、吉岡が

「自分は体が不自由だから女の子に相手にされない」と

かなり話を盛ったのを本気にしたからだし、

 

その他にも、自分ががんばって働いて得たお金を

他人にあげたりする。

 

つまり困っている人を見ると、見返りを全く求めず

相手のために行動してしまう。

 

もちろん、自分がいいことをしているなんていう自覚はない。

 

ミツが、一見ごくふつうといか、さえない感じなのがいい。

美人でもないし、特別な知性も教養もない。芸能人好きのミーハー。

 

そういう地味~な人ではあるが、誰にも真似できない美しい心を持っていたのである。

 

吉岡はやがてミツがたどったその後の人生を知り、

彼女は聖女だったと思うのだ。

 

しかし、吉岡はここで真実に目覚め、これまでの打算的な人生に別れをつげ、

ミツのような生きかたをする、なんてことはない。

 

また日常が続いていくのだ。

そういう展開がまた、好きだなあ。

 

吉岡はこの先、そこそこ出世して、子どももできて、

小さい浮気なんかもあるかもしれない。

そんな人生のなかに、ミツという類まれな人と関わった、

ということを、時々思い出すのだろう。

 

わたしが棄てた女 (講談社文庫)

わたしが棄てた女 (講談社文庫)