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町でうわさの本読みブログ

誰にも気づかれないうちにタイトル変更。現在は読書感想と、日常の面白いことについてつづります。

謎とき「罪と罰」 江川卓

罪と罰」の解説本ともいうべき本です。

帯には「ドストエフスキーを本当に愉しむために最初に手にすべき1冊がここに!」と。

 

しかし、本書は軽い気持ちで手にすると、やけどする1冊。

中身は「罪と罰」への愛があふれて燃え上がり、ぐらぐらと煮えたぎっています。

 

著者はこの物語世界をできる限り実感しようとします。

それは大変誠実な態度だと思うのですが、なんだかすごいことになっていくのです。

 

例えば、主人公の下宿先から、彼がのちに殺すことになる

金貸しばあさんの家まで730歩とあるので、実際にその距離を

歩いてみたりしたというのです。

 

そしてまたあるときは登場人物たちのセリフをしぐさまじりに

朗読してみたり…。もちろん、そのときにはストップウオッチを片手に。

 

何しろこの小説、1日24時間のうち、48時間は誰かがしゃべってると

思うくらい、みんな饒舌。

 

しかし、江川先生の測定によると、会話時間、移動時間はきちんと24時間以内に

収まるそうです。

 

恐るべし、ドストエフスキー先生、江川先生!

 

そして、こういった細かい作業は、江川先生にとって

とても愉しい時間だったそうです。

そうでしょう、そうでしょうとも!

 

もうこうなったら愛というより、業ですね。

先生の魂の一番奥深いところにこの「罪と罰」という

作品が入り込んでいる。

 

そして読者も、煮えたぎる思いにときに戸惑いつつ、

最後はその業を共有することになるのです。

 

19世紀半ばにロシアで書かれた小説、

20世紀終わりにそれについて書かれた解説本、

それらを21世紀始めごろに読む。

まさに時空を超えた愉しい出会いでありました。

 

おまけ

たしか2週間ほど前に、1度この本の感想を書いたのですが、

全面的に書き直しました。

黙っていれば誰も気がつかないことですが、念のため。

 

謎とき『罪と罰』 (新潮選書)

謎とき『罪と罰』 (新潮選書)